2020年5月、世界初の民間企業による有人宇宙飛行が、SpaceXの手により成し遂げられました。宇宙開発は、人類の永遠の夢ともいえる分野です。SpaceXはまさに、歴史に名前を刻んだ企業といえるでしょう。
宇宙開発を進めていくうえで、コストの削減や宇宙ゴミとの衝突回避など、解決すべき課題は山積みです。本記事では、宇宙開発の歴史を紐解きながら、宇宙開発における課題をどう解決していくのかをお伝えします。
また、元NASAのエンジニアである一ノ瀬喜一郎氏をコメンテーターに迎え、宇宙開発において注目を集めるテクノロジーも紹介します。
宇宙開発とは?
宇宙開発とは、宇宙空間を人類の生活と進化に役立てるために、宇宙への進出と研究を進めていく分野です。人類が宇宙開発を進めるのには、主に3つの目的があります。
【宇宙開発の目的】
- 宇宙空間を生活に役立てるため
- 地球の自然環境を守るため
- 人類全体の知的探究心を満たすため
宇宙開発における「宇宙空間を生活に役立てるため」「地球の自然環境を守るため」という目的は、既にさまざまなサービスや研究成果として、人類の生活の中で形になっています。
衛星から地球の様子を撮影する「衛星写真」は、宇宙開発の成果として代表的なものです。身近なサービスでは、Google Earthのような衛星写真を活用したものがあります。衛星写真は、地球の自然環境を守るためにも役立てられており、森林の侵食具合やオゾンホールの発生も、衛星写真から観測できます。
宇宙開発の歴史
宇宙開発の歴史を振り返ることで、今後の宇宙開発において注目を集めるテクノロジーに対する理解をより深められます。
【宇宙開発の歴史】
1903年:ライト兄弟が世界初の飛行機を開発
1957年:世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げ
1961年:ガガーリンによる世界初の有人宇宙飛行
1969年:アポロ11号の有人月面着陸
2010年:国際宇宙ステーションの完成
2020年:民間企業による有人宇宙飛行の成功
宇宙開発は、まだ100年余りの歴史しかない分野です。ライト兄弟による世界初の飛行機の発明から、航空飛行技術は一気に研究・開発が進み、人類は地球だけでなく宇宙空間で飛行することが可能な衛星やロケットを開発しました。
【宇宙開発の快挙】SpaceXによる世界初の民間打ち上げ
2020年5月31日、SpaceXによる有人宇宙飛行が成功しました。民間企業による世界初の有人宇宙飛行の成功として、宇宙開発に関連する企業だけでなく、多くの人々の注目を集めた出来事でした。
SpaceXは、元NASAのエンジニアであるイーロン・マスク氏が設立した企業です。NASAでの研究成果を土台として、民間ならではのスピード感を活かして、宇宙開発を進めてきました。
また、SpaceXは、打ち上げ後のブースターを打ち上げ地点まで帰還させる「航空誘導制御」という、新たなテクノロジーの開発にも成功しています。
宇宙開発に伴う課題、注目を集めるテクノロジー
従来、打ち上げ後のスペースシャトルのブースターは、宇宙空間に放置されていました。しかし、航空誘導制御の開発により、ブースターの再利用が可能となったのです。スペースシャトル打ち上げのコスト削減につながるテクノロジーとして、注目を集めています。
また、ブースターを回収できることには、宇宙ゴミの削減というメリットもあります。
宇宙開発が進むにつれ、役目を終えた衛星やブースターといった宇宙ゴミは増え続けてきました。宇宙空間を高速で飛び回る宇宙ゴミとの衝突の危険に、衛星や宇宙飛行士は常にさらされているのです。
宇宙ゴミとの衝突を回避するためのテクノロジーにも、注目が集まっています。
宇宙開発の分野で注目を集める宇宙状況把握システム
宇宙開発の発展に伴い、深刻化する宇宙ゴミの問題。宇宙ゴミへの対処として注目されているのが「宇宙状況把握(SSA)システム」です。
宇宙状況把握システムは、宇宙ゴミやほかの衛星との衝突を避けるために使われるようになりました。日本の宇宙航空研究開発機構・JAXAでも、より安全な宇宙開発のためのカギとなるシステムとして、研究に力を入れています。
【JAXAで行われているSSAの活動】
- 宇宙ゴミの観測
- 起動情報のデータベース化
- 人工衛星との接近解析
- 大気圏再突入の予測
上記のような宇宙ゴミの観測と、衝突を避けるためのデータベース作成に、宇宙状況把握システムは活用されています。まさに、今後も発展していくであろう宇宙開発にとって、不可欠なテクノロジーと言えます。
宇宙開発の注目企業を3社紹介!
ここからは、宇宙開発を進める企業の中でも、注目すべき企業を3社紹介します。
宇宙開発の注目企業は以下の3社です。
- LeoLabs
- Planet
- SpaceX
注目企業としてはじめに紹介するLeoLabsは、コメンテーターの一之瀬氏も注目する宇宙開発企業です。
それぞれ分野の異なる3つの企業の紹介を通して、今後の宇宙開発において、どのようなテクノロジーに期待が集まっているのかを見ていきましょう。
【宇宙開発の注目企業1】LeoLabs
コメンテーターの一之瀬氏が注目する宇宙開発企業が、LoeLabsです。
LeoLabsは元々、北極圏のオーロラが映る「電離層」を観測するためのレーダーを、30年近く開発していました。オーロラの発生する高度と、衛星の飛んでいる高度は近く、オーロラが映る電離層を観測していると、どうして衛星通過のデータが入り込んでしまいます。
電離層を観測したいLeoLabsは、衛星通過のデータをノイズとして削除していました。しかし、宇宙開発に力を入れる多くの企業にとって、LeoLabsがノイズとして扱っていた衛星のデータは価値のあるものです。
自社にとってノイズでしかなかったデータを、宇宙開発を進める多くの国や企業に提供するという、まさに逆転の発想でLeoLabsは成功を納めました。
【宇宙開発の注目企業2】Planet
Planetは、NASAの元スタッフによって設立された、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業です。
小型かつ高性能な衛星郡を使い、地球が変化していく過程を衛星画像として撮影。高性能のカメラにより、頻繁に地球の様子を撮影することで、情報として有用な衛星画像を提供しています。
Planetが撮影するのはあくまで衛星画像ですが、テクノロジーには目をみはるものがあり、100ヵ国以上に顧客を保有する注目の企業です。
今後、テクノロジーとデータ運用のノウハウを活かし、宇宙開発のためのデータ提供を展開していく可能性もあるでしょう。
【宇宙開発の注目企業3】SpaceX
SpaceXは、宇宙輸送を行うスタートアップ企業です。ロケットや宇宙船を設計、製造し、自社で打ち上げも行っています。
また、乗組員や貨物のためのカプセルを開発したり、航空電子機器や宇宙航空機を制御するためのソフトウェアを開発したりと、宇宙開発に必要なさまざまな設備・テクノロジーに携わる企業です。
宇宙開発に革新を起こし続けるSpaceXのミッションは、人類がほかの惑星で生活するためのテクノロジーを開発すること。地球からの移住という、まさに人類の夢の実現に向けて、宇宙開発を進める企業と言えます。
宇宙開発を安全に進めるためのテクノロジーに注目が集まる
宇宙への移住は、まさに人類の夢であり、宇宙開発は人類の夢を実現するためのテクノロジーだと言えます。
しかし、まだまだ謎が多く、地球上のように自由に活動できない宇宙空間では、宇宙開発のために打ち上げた衛星やロケットを回収することもままなりません。
宇宙開発を進めれば進めるほど、宇宙ゴミは増えていき、宇宙開発のための衛星やロケットが危険にさらされることになります。
宇宙ゴミの回収・処理は現代のテクノロジーでは難しく、宇宙ゴミのデータを集め、衝突を回避するためのテクノロジーに注目が集まっています。